芸術文化観光専門職大学はやばい?日本初の公立専門職大学の中身を実データで解説

「芸術文化観光専門職大学 やばい」で検索する人の多くは、専門職大学という聞き慣れない区分や、2021年開学という新しさに戸惑っているようです。無名で大丈夫なのか、と。
当サイトの判定は偏差値45.0で対象外、いわゆるFランではありません。兵庫県豊岡市にある公立大学の中身を、平田オリザ学長や約800時間の実習といった実データで確かめていきます。
この記事の目次
「専門職大学」が聞き慣れないだけで、正規の4年制大学です
芸術文化観光専門職大学で最初に引っかかるのは「専門職大学」という耳慣れない区分です。短大でも専門学校でもない中途半端な学校ではないか、と身構える人がいます。
専門職大学は2019年度に新しく作られた大学の種類で、学位が出る正規の4年制大学です。従来の大学より実習や現場での学びを厚くし、特定の職業分野で活躍できる人を育てることを狙って制度化されました。芸術文化観光専門職大学は、その枠組みの中で芸術文化と観光の2分野を橋渡しする、日本で初めての公立の専門職大学として2021年4月に開学しています。略称はCATです。
つまり「専門職大学だからやばい」のではなく、大学の設計思想が理論偏重ではなく実践寄りに振ってあるだけ、と捉えるのが正確です。設置したのは兵庫県で、運営母体も公立です。名前の新しさと中身の不安定さは、いったん切り離して考えたほうが実像に近づきます。
初代学長が劇作家の平田オリザ、という珍しさ
不安のもう一つの源は、学長が大学人ではなく劇作家だという点かもしれません。芸術文化観光専門職大学の初代学長は、現代演劇を代表する劇作家・演出家で、劇団「青年団」を主宰する平田オリザ氏です。
平田氏は2019年に東京から豊岡市へ移住し、豊岡演劇祭のフェスティバルディレクターも務めています。地域に腰を据えた人物が学長にいることは、この大学が掲げる「理論と実践を交互に行う」という方針と地続きです。演劇教育で培ったコミュニケーションの手法を、観光や地域づくりにつなげる発想が大学全体の骨格になっています。
著名人が名前だけ貸す名誉職ではなく、平田学長は2年生向けの授業を自ら担当するなど、教育の現場に入っています。学長の経歴が異色に見えるのは事実ですが、それはこの大学が何を教えようとしているかを、むしろ分かりやすく示している看板です。
授業の約3分の1、およそ800時間が現場での実習
専門職大学の特徴が最もはっきり出るのが実習量です。芸術文化観光専門職大学では、授業のおよそ3分の1、時間にして約800時間が現場での臨地実務実習に充てられています。座学だけで4年間を過ごす一般的な学部とは、時間配分がそもそも違います。
実習先に恵まれているのが豊岡という土地の強みです。すぐ近くに人気観光地の城崎温泉があり、地元には但馬空港もあります。学生は観光旅館や空港といった本物の現場で職業体験を積めます。芸術の側では、毎年開かれる豊岡演劇祭や、平田学長が拠点とする江原河畔劇場での公演に携わり、プロの舞台づくりの現場を経験します。
実習が多いこと自体を「授業が少なくてやばい」と読む人もいますが、専門職大学ではこの現場時間こそが学びの本体です。芸術文化と観光の両方を、地域という同じフィールドで実地に学べる設計は、この大学ならではのものです。
国公立で初めて演劇・ダンスを本格的に学べる
芸術文化観光専門職大学は、国公立大学として初めて演劇やダンスの実技を本格的に学べる大学でもあります。教員には世界を舞台に活動してきた演劇人やダンサーが名を連ね、220人を収容できる劇場やスタジオといった施設も備わっています。
象徴的なのが、1年次に全員が履修する演劇的手法による「コミュニケーション演習」です。演劇のワークショップを通じて表現力や協働性、多様な人と対話する力を養う狙いがあります。演劇の技術を役者になるためだけでなく、観光や地域の現場で人と関わる力に変換していく点が、芸術系の単科大学とは異なります。
演劇やダンスを本気でやりたい人にとって、国公立でこの環境が整っているのは大きな利点です。一方で、芸術に関心がなく資格だけを効率的に取りたい人には、カリキュラムの重心が合わない可能性があります。自分がやりたいことと大学の重心が噛み合うかを先に確かめておくと、進路の判断がぶれません。
豊岡・城崎という地方立地と1年次の全寮制
立地への不安もよく語られます。豊岡市は兵庫県の北部、但馬地域にあり、都市部から気軽に通える距離ではありません。芸術文化観光専門職大学では1年次が原則として全寮制で、学生寮での生活から4年間が始まります。
ただ、この立地は弱みであると同時に強みでもあります。城崎温泉や豊岡演劇祭という実習資源がすぐそばにあること自体が、この大学の教育を成り立たせています。全寮制も、全国から集まった1学年80人ほどの学生が濃い時間を共有し、大学の文化を一から作っていく土台になっています。地域創生の担い手を育てるという設立の狙いとも、地方立地は矛盾しません。
都会の便利さや自宅通学を重視するなら、豊岡での生活は覚悟が要ります。反対に、現場に囲まれた環境で腰を据えて学びたい人には、この立地はむしろ条件が揃っています。ここも好き嫌いではなく、自分の学び方に合うかで判断する部分です。
偏差値45.0と志願倍率、定員割れはしていない
数字の面も確認します。芸術文化観光専門職大学の偏差値は45.0で、当サイトの判定は対象外、いわゆるFランには当たりません。偏差値だけを見て身構える必要はない位置づけです。
人気の面でも、定員割れの大学ではありません。募集人員80名に対し、2025年度入試の志願者数は310名、志願倍率は3.1倍でした。前年の2024年度は2.8倍で、倍率はむしろ上がっています。さかのぼると開学時の2021年度は621名が志願し、84名が第一期生として入学しています。新設で無名という印象とは裏腹に、募集人数に対して志願者はしっかり集まっています。
1学年80人という規模は、少人数で教員との距離が近い学びを可能にします。偏差値と倍率の両方を見れば、入口が極端に易しいわけでも、人が集まらない不人気校でもない、という実像が見えてきます。
卒業後の進路、最初の卒業生はどこへ
開学が2021年のため長期の実績はまだ蓄積の途中ですが、最初の卒業生は2025年3月に送り出されています。歴史が浅いことを不安に感じる人は、この初年度の進路を手がかりにできます。
大学が公表する主な就職先には、芸術文化の分野で劇団四季や宝塚舞台、東京都歴史文化財団、城崎国際アートセンターなどが並びます。観光の分野ではオリエンタルランドやJTB、地元の旅館やホテルといった名前が挙がっています。芸術と観光の双方を学んだ強みを生かし、進路が両分野に広がっているのが特徴です。在学中に約800時間の実習で現場を経験している点は、就職活動でも生きています。
ただし卒業生を出し始めたばかりで、就職率のような数字はまだ年数が少ない段階です。志望する分野の具体的な就職先や、その分野への進み方は、大学のキャリア支援の実績とあわせて個別に確認しておくと安心です。歴史の浅さは、これから実績が積み上がる余地とも言えます。
よくある質問
芸術文化観光専門職大学は「Fラン」ですか?
偏差値45.0で当サイトの判定は対象外、Fランには当たりません。2021年開学の公立専門職大学で、募集80名に対し2025年度の志願倍率は3.1倍と、定員割れもしていません。
専門職大学とふつうの大学は何が違いますか?
専門職大学は2019年度に創設された正規の4年制大学で、学位も出ます。従来の大学より実習を厚くしているのが特徴で、本学は授業の約3分の1、およそ800時間を現場での臨地実務実習に充てています。
学長が劇作家というのは大丈夫ですか?
初代学長は劇団「青年団」を主宰する劇作家・演出家の平田オリザ氏で、名誉職ではなく授業も担当しています。2019年に豊岡へ移住し豊岡演劇祭のディレクターも務める、地域に根ざした人物です。
就職先はどんなところがありますか?
芸術文化分野で劇団四季・宝塚舞台・東京都歴史文化財団、観光分野でオリエンタルランドやJTB、地元の旅館やホテルなどが公表されています。初の卒業生は2025年3月に送り出されました。
豊岡の立地や全寮制は不便ではないですか?
兵庫県北部の但馬地域にあり、1年次は原則として全寮制です。通学の便はよくありませんが、城崎温泉や豊岡演劇祭という実習資源がすぐそばにあることが、この大学の学びを支えています。

相川 直樹